「債務整理」と聞いてどのような方法が思い浮かぶでしょうか。
やはり、自己破産や任意整理が思い浮かぶ人が多いかもしれませんね。
裁判所に申立を行う債務整理の一つに「特定調停」があります。
そこでこちらでは、特定調停について詳しくお話していきます。
最近、申し立てをする人が減ってきているという特定調停ですからデメリットに関しては、ぜひ知っておく必要があるでしょう。
特定調停とは
債務整理の中の一つに「特定調停」があります。
特定調停は民事調停の特例として、借金の返済が難しい人が債権者と債務の支払いなどについて裁判所で話し合いをし、生活を立て直すという債務整理方法の1つです。
こう聞いても、イメージするのがイマイチ難しいと思う人も多いかもしれませんね。
簡単に言うと、債務者から裁判所へ申立を行い、裁判所の調停委員に間に入ってもらって債権者、債務者で利息の減額や返済額の軽減などについての話し合いをする事を言います。
特定調停は個人のみならず、法人でも申し立てを行うことが可能です。
他の債務整理では一般的に弁護士などの専門家に依頼をして行うのに対し、特定調停は債務者本人だけで行うことが多い手続きです。
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特定調停のデメリット
債務整理には、「自己破産」・「任意整理」・「個人再生」・「特定調停」がありますが、その中でもデメリットが少ない債務整理方法を選びたいと誰もが思っているはずです。
特定調停にはデメリットも多く存在しますから、ぜひ知っておいてください。
裁判所に何度も足を運ばなくてはならない
特定調停を行うためには、裁判所に何度も足を運ぶことになります。
そのため、債権者が多い場合にはそれに応じて裁判所に足を運ぶ機会が多くなってしまうでしょう。
さらに、平日に裁判所に行かなくてはならないため、その日はどうしても仕事を休まなければなりません。
たびたび何らかの言い訳を考えて仕事を休むとなると周りの目も気になりますし、「もしかして借金についての話し合いで休んでいるということがバレてしまうのではないか?」などといった余計なストレスも増えることになるでしょう。
また、慣れない裁判所に足を運んで話し合いをしなければならないという行為自体、ストレスになるはずです。
財産を差し押さえられる可能性がある
特定調停では、最終的に両者の話し合いに決着がつくと「調停調書」が作成されます。
この調停調書は判決と同じ効力をもった債務名義に当たるため、債務者の返済が滞った場合などに、債権者による強制執行が可能となってしまいます。
この強制執行により、給与の差し押さえなどが行われる可能性もあるのです。
強制執行で差し押さえの可能性があるなんて、考えただけでも恐ろしいですよね。
今は話し合いで決められた通り返済を行える見込みがあったとしても、病気で働けなくなったり、何らかの理由で収入が減ったりした場合には、返済が困難になる可能性は誰にでもあるでしょう。
それを考えると、やはり特定調停のデメリットを甘く見ないほうが良いかもしれません。
取り立てが止まるまでに時間がかかる
通常ならば債務整理を弁護士に依頼すると、すぐに債権者に受任通知が送られます。
受任通知を受け取ってからは、債権者が債務者に対して取り立てを行うことはできませんから、その時点ですぐに取り立てがストップします。
しかし、特定調停の場合は特定調停を行うことを決め、書類などを自分で揃え、申立を行い、その後特定調停開始の通知が債権者に送られ、そこでやっと取り立てがストップします。
つまり、特定調停は他の債務整理の手続きと比べて、取り立てがストップするまでに時間がかかるということです。
いち早く取り立てをストップしたいという人は、別の債務整理を選んだ方が良いでしょう。
5年前後ブラックになる
債務整理を行うとその情報は信用情報機関に一定期間登録されるため、その間はいわゆる「ブラック」状態になってしまいます。
ブラックになるとその間は、クレジットカードやカードローン、住宅ローンや自動車ローンなどを利用することができなくなります。
必ず話し合いが成功するとは限らない
特定調停では、債権者との話し合いをして同意を得なければなりません。
なかにはなかなか同意してくれない債権者もいるため、必ず話し合いがうまくいくとは限らないのが現実です。
ちなみに自己破産の場合には、裁判所で認められれば債権者の同意なく行うことができます。
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特定調停スキームとは
特定調停について調べていて「特定調停スキーム」という言葉を目にしたという人もいるかもしれませんね。
この「特定調停スキーム」についてもこちらで説明しておきましょう。
特定調停スキームは、個人ではなく法人のためのものです。
平成25年3月に中小企業金融円滑化法(正式名称:中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律)が終了したことへの対策として策定されました。
民事再生法などの手続きを行ってしまうと、事業の価値が下がって事業を再生することが困難である中小企業が、弁護士やほかの専門家の協力を得て再生計画案を立てて特定調停を行います。
年商がおおむね20億円以下、負債の総額がおおむね10億円以下の企業で利用できる手続きとなります。
この特定調停スキームのメリットは、「私的整理」であるという点です。
非公開で行うことができるため、「倒産」といった悪いイメージを周囲に与えずに済みます。
ただし、特定調停スキームには申立前に債権者と交渉を行わなければならないなどの点があり、個人の場合とは多少流れも違ってきます。
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特定調停の手続きの流れ
特定調停は基本的に自分で行うことが多い方法ですが、どのような流れで進んでいくのでしょうか。
こちらで、特定調停の流れについて見ていきましょう。
まず、「特定調停申立書」・「債権者の一覧」・「財産の状況などが分かる書類」を作成します。
それ以外の書類が必要になる場合もありますから、事前に申立予定の簡易裁判所に問い合わせをしておくようにしましょう。
書類の準備が整ったら、簡易裁判所に申立を行います。
基本的には、債権者側の管轄の簡易裁判所に申立を行うことになっています。
申立から数日経つと、裁判所から債権者に対して特定調停の申し立てが行われたということが通知されます。
通知後は、債権者からの取り立てがストップします。
裁判所が調停委員を選任した後、申立人と調停委員の間で調査期日が設けられます。
債務の状況や財産の状況などについて質問され、返済計画案が作成されますが、返済が不可能だと判断されてしまった場合、この時点で終了になってしまうこともあります。
裁判所と債権者で話し合い、すでに作成されている返済計画案に基づいた計画を立てます。
債権者の同意が得られれば調停は終了です。
債権者が返済計画に同意をして話し合いがまとまったら、「調停調書」が作成されます。
この調停調書には、具体的な返済計画が盛り込まれて今後は、この計画に基づいて返済を行っていきます。
もし、債権の同意が得られずに話し合いがまとまらなかった場合には、調停委員から話を聞き、裁判所がこれまでの話し合いに基づいて適切な内容の調停条項を決定します。(17条決定)
なお、初めから債権者が17条決定を求める場合もあります。
ご覧の通り、特定調停の手続きの大変さや時間が大幅にかかることは一目瞭然でしょう。
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特定調停の「17条決定」について
先ほど特定調停の流れの中で「17条決定」という言葉が出てきました。
これはどういうことなのでしょうか。
特定調停は本来、債務者と債権者が話し合いをして、返済計画案に同意をすることによって解決をしなければなりません。
しかし、お互いに言い分もありますし、簡単に同意するというのが難しいケースも多々あるでしょう。
調停が成立しないと判断された場合、裁判所が調停委員から状況を聞き、これまでの話し合いをふまえてお互いにとって公平になるように調停条項を決めることができます。
これを「17条決定」といい、民事調停法第17条に定められているものです。
ただし、決定が報告されてから2週間以内なら、これに異議申し立てをすることも可能。
異議申し立てが行われると、特定調停は不成立に終わってしまいます。
そのような場合には、特定調停は諦めて自己破産、任意整理、個人再生などほかの債務整理方法を検討しましょう。
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特定調停の申し立てを行う人が減ってきているって本当?
これまで特定調停について見てきて、どう感じたでしょうか。
返済が滞った場合に差し押さえなどの危険や、裁判所に自分で平日に何度も足を運ばなくてはならない不便さ、特定調停申立書をはじめとした書類を自分で用意しなければいけないなどデメリットが多いと感じた人も多いはず。
ちょっと見ただけでも、「なんだか大変そう。自分にできるだろうか?」と不安になってしまったのではないでしょうか。
自分で平日に裁判所に足を運んだり書類を作ったりしなければならないとなると、想像以上のストレスが溜まります。
これでもし、話し合いが平行線に終わってしまったらと考えると、やはり不安ですよね。
特定調停は、自己破産、任意整理、個人再生などほかの債務整理方法に比べてメリットが少ないと言えます。
そのせいか、最近では特定調停を利用して債務整理をする人は減ってきているようです。
やはり、差し押さえなどのリスクを考えると、安易に特定調停を行うと後悔する結果になるかもしれません。
裁判所での手続きや書類の準備などを全て自分で行うというのは、やはり難しいものです。
素人が相手だと分かっていると債権者側もなかなか同意してくれない可能性が高いです。
ストレスを溜めて頑張って手続きをして、結局同意が得られずに終了してしまったら意味がありません。
債務整理は、やはり弁護士などの専門家に依頼のできる方法を選んだ方が確実です。
特定調停にこだわらず、今自分の置かれている状況を良く把握し、自己破産、任意整理、個人再生のいずれかを選んで弁護士へ依頼をすることをおすすめします。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、特定調停に潜むデメリットや特定調停の流れなどについてお話してきました。
最近では、特定調停の申し立てをする人は減ってきているようです。
返済が滞った場合に財産差し押さえなどの危険があったり、そもそも話し合い自体が成立せずに終わってしまう可能性があったりすることを考えると、やはり怖いですよね。
メリットもそれほど見当たりませんから、あえて特定調停を選ぶ必要は無さそうです。
債務整理を行うなら、借金問題に強い弁護士に自己破産や任意整理、個人再生などの依頼をすることをおすすめします。
これらの方法にもそれぞれメリット、デメリットがありますから、それをチェックした上でどの方法を選ぶか決めるのが良いでしょう。
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